わたしは何か描くとき、
ひとつの同じ話を
何度も何度も描いたり、
同じ絵を何度も何度も描いたりすることがある。この絵もそのひとつ。
絵でなくて、この木。
ある一本の木。
“アフター・ダーク”と呼んでいる。
葉の茂みの闇から、木は始まっている。
その闇に吸い込まれそうになる。
闇をみてると、葉が伸びてくる。
白い葉にいつのまにか包まれる。
黒と白が反転し合う。
それを毎回描こうとするのだけど、
絵がおいつかない。
だから、また描く。
アフター・ダークは、
村上春樹の小説から。
村上春樹に狂っていた20代、
ねじまき鳥でショックを受けて、
この人はこれ以上の小説は書かないだろうと勝手に決めつけて、
読まなくなってしまった。
当然、そんなことはなくて物語は続いた。
リハビリのつもりで読んだアフター・ダーク、
光と闇が交換する話。
わたしの木もそれを語ってる。