2012/03/06

3.6 TOKIO HEAVEN BEFORE 3.11





















































 
突然、訳わからないものを50枚も載せてすみません。

3.11の前に「トキオ・ヘヴン」を追悼しようと思う。
ちょうど一年前の今頃描いていた「トキオ・ヘヴン」。


Alog (アログ) というノルウェーの音楽家のユニットから
50枚の手作りCDアルバムのジャケット用に、
漫画イラストを依頼されて描いたもの。
アルバムには、彼らが‘08年に来日した際、
東京のSuperDeluxe と、
大阪の今はなきAD&A galleryで行ったライヴ音源がおさめられてる。

初めて日本に来たalog、ダグとエスペン、
とても人懐っこくて、キュートで、クレヴァーなふたりをモデルに、
ふたりが滞在した東京と大阪、
とくにふたりが「ロスト・イン・トランスレーションみたいだ!」と歓喜した
新宿の街を舞台にした。
ふたりとも純粋にトキオに夢をみていた。


50枚で連続したストーリー、かつ1枚でも成立する絵、
絵もセリフも手書き、しかも地の紙がスミも染みやすく、
しかも茶色な為、修正液も使えず一発勝負で描かなければいけない、
というすごく神経を使う作業だったのだけど、
新宿の街を描くのは楽しかった。
光と音と人で溢れた街。
トキオ・ヘヴンというのは、
敬愛している相米慎二監督の「東京上空いらっしゃいませ」から。

3月11日には、
最後の10枚を残すくらいになっていたのだけど、
福島第一原発の事故で、わたしの描いていた漫画の舞台、
新宿の風景はがらっと変わってしまった。

事故直後、漫画の続きを描くのは、しんどい作業だった。
余震の中、暗闇の中、描いた。

しかもわたしがいちばん描きたかった、新宿の上空。
光る惑星。

枠線の中の世界と、目の前の世界がズレていった。

漫画の中のトキオと、目の前に広がる節電でうす暗い新宿は、
違う惑星のようだった。
それは節電で電気がついていないからじゃない。
時代がひとつ終わった。
時空がズレたのだった。
東京タワーの先が地震で曲がって、それをもとに修理で戻しても、
何か、が変わってしまったように。


ジャケットが完成したのはずいぶん前だけど、
わたしの中ではこの作品を受け止めることができなかった。
自分の中でもズレてしまったものを
自分からは誰にもみせられない。
それが残念で、悔しかった。
原発でうしなったもののひとつは「トキオ・ヘヴン」

かつてのファンタジーになってしまった。
アログのふたりに「もうこのときの東京はないよ」と言いたかった。

一年、ずっとどうしようと気になっていたけれど、
3.11以前の街の記憶としてここにあげることにしました。

手書きで読みにくく、拙いものですが、
50枚、読んでくださった方、
ありがとうございました。
ようやく「トキオ・ヘヴン」を追悼できます。

いま、このつづきを描くとしたら、
わたしは東京の地下鉄の風景から話を始めたい。
地鳴りと、暗闇。
そこから地上に向かう話。


最後にalogのこと、ダグとエスペン、
音楽のほかにダグは陽気なデザイナー、
灰野さんのライヴをじいっと観ていたダグが懐かしい(灰野さんの大ファン)。
エスペンは「カモノハシはノイズである」という研究をしている
小粋な哲学者でもある。
カモノハシは哺乳類でありながら、
タマゴを産む非常に珍しい中間な生き物、
つまりノイズであるとのこと。
漫画にカモノハシが出てくるのはそういう訳です。
ふたりの作る自作楽器はアナログとデジタルの中間、
アナロジカル具合がおもしろく、
演奏はノルウェーの土着のリズムを感じさせる。
非常におもしろい音になっているので、
よければアルバムをalogサイトからご購入ください。

この漫画イラストはAlogのwebサイトにも載っているのですが、
こちらは原画の色からかなり色が浅く、
スミの色もちゃんと出てないのでこちらにアップしました。





















Alog
Espen Sommer Eidet(エスペン・ソンメル・アイダ)とDag Are Haugan(ダグ・アール・ハウガン)のデュオ。
ギター、シロフォン、ターンテーブル、コンピュータ、そして自作楽器スロットベルグを駆使した
異形の電子ミニマル・フォークロアを奏でる。
これまでにRune Grammofonから4枚のアルバムをリリース。
http://www.alog.net/
http://www.runegrammofon.com/